「手渡したいのは青い空」を合言葉に、公害地域の環境再生と持続可能な社会づくりを目指し、地域再生、公害環境教育、団体の経験を海外に知ってもらうことの3つに関わる取り組みを進めています。今回、事務局長である藤江徹(ふじえいたる)さんにお話をお伺いしました。
あおぞら財団(公益財団法人公害地域再生センター)
藤江徹 さん
当事者の目線に立って活動の判断を行う
テラエナジー
はじめに、藤江さんの自己紹介をお願いします。
藤江さん
あおぞら財団に勤める前は、湯布院でまちづくり関係の仕事をしていました。出身が大阪なので、地元のまちづくりに関わりたいと考えていた時に、あおぞら財団がまちづくりに取り組んでおり、人を募集していました。恩師が役員をしていて声をかけてもらい、それを機に転職しました。

テラエナジー
環境問題に取り組むなかでむずかしいと感じることはありますか。
藤江さん
現在の大気汚染の原因のほとんどはディーゼル車です。つまり今すぐに失くすことができるものではありません。煙を出している方が100パーセント悪いのかというと、そうではないと思っています。一つの物事が良い側面と悪い側面、被害者と加害者の両方を持っているんです。だから原因を突き止めて改善することがむずかしいです。西淀川大気汚染裁判の場合も、都市型複合汚染だったため、たくさんの工場がある中で、さまざまな場所から汚染物質が発生するので、因果関係を証明することが困難でした。
テラエナジー
公害の被害に遭われた患者さんとの交流はよくされているのでしょうか。
藤江さん
同じビルの2階に西淀川公害患者と家族の会の事務所があるので、よくお会いします。転地療法といって、空気のきれいな場所へ行ってご飯を食べたり、毎年6月に日比谷公園の前でデモを行ったりしています。あおぞら財団では、当事者の目線に立って考えることを大切にして活動しています。たとえば、活動していて何かの判断をしなければならない時に、「あおぞら財団に願いを託された患者さんだったらどう言うだろうか」と考えますね。

テラエナジー
活動するなかで心を動かされたことはありますか。
藤江さん
患者さんから公害被害の話を聞くと、若い方も関心を示してくれます。たとえば、なぜ大気汚染が起きたのか? なぜ被害を防げなかったのか? これからどうしていけば良いのか? と自分事として考えてくれるようになります。当事者の言葉は、人の心を動かす力があると思いますし、「伝えること」を大切にしたいと思っています。
「おもしろい」かどうかを判断軸に
テラエナジー
今まで団体のことについてお聞きしてきたんですけど、藤江さん個人のこともお聞きしたいです。藤江さんが日々生きる中で大切にしていることについて教えてください。
藤江さん
「おもしろいかどうか」ですね。公害の問題は言ってみれば「悪いこと」が見えてしまうので、そうであれば「良いこと」をやればいいとなりがちなんですけど、それではあまり続かないものです。作業の苦労や、それに付随するややこしいことはあったとしても、活動していて楽しいことやおもしろいことがあったり、「これはやってみたい」と思うことがあるといいですね。「公害問題に取り組むことは、正しいからやるんだ」と言われるとつらいです。
テラエナジー
おもしろさと言うと、たとえばユニークさなど、人によってさまざまあるのかなと思うんですけど、どういったことにおもしろいと感じられますか。
藤江さん
予定調和ではなくて、想定外のことが起きたり、さまざまな人が関わって、自分一人ではできない、自分の想像以上のことができたりしたらワクワクしますね。
テラエナジー
これまでの活動の中で、具体的に「これはおもしろい企画ができた」と感じた企画はありますか。
藤江さん
地域の元バスターミナルを中心にアートのイベントを行うんですけど、それはみんなが「おもしろい」「いいね」と思うから企画が進むんだと思います。工場が多い地域で、文化施設が全然ないので、まち歩きとアートイベント兼ねたイベントを10年ほど開催しています。まち全体を使って、アートイベント(みてアート)を行うのですが、そこでさまざまな作家さんに展示してもらったりします。作家さんやアーティストは、視点がまた違ったりして、すごいなと驚きとおもしろさを感じました。総合ディレクターとして、アーティストの山田龍太さんが「ワクワクをカタチに」というテーマでやっていて、それが大事だと思いますね。

テラエナジー
あおぞら財団の活動の中でも藤江さんが大事にされている「ワクワクすること」っていうのが活かされている部分もありますか。
藤江さん
そうですね。「自転車文化タウンづくりの会」は、もともと環境にいいから自転車を使う活動をしていたら、視覚障がいを持っている方が来て、「俺らも乗りたいねん」という話になったんですよね。それで2人乗りの自転車を見つけて、一緒に乗るようになりました。そうするうちに自転車の乗る技術や交通ルールを未就学児から学ぶ、デンマーク式子ども自転車教室というプログラムを勉強する機会を得ました。そのプログラムを始めたら、要望が増えて、さまざまな場所でさせてもらいました。
テラエナジー
派生していろいろされているのですね。藤江さんご自身が楽しんで活動されていることが伝わってきます。大きな話になるんですけども、藤江さんご自身の人生のテーマについて教えてください。
藤江さん
今年で50歳になるので、あと10年何をしようかと考えて悩んでいます。やっぱり「おもしろいことをやる」ということですね。

大きな歴史の流れの中でも、いま自分にできることを
テラエナジー
今いちばん関心のあることについて教えてください。
藤江さん
コロナ禍で飲みに行けなくなったので、ひたすら料理を作っています。食べたことのない野菜を買ってきては、料理レシピのアプリでレシピを検索して作って、食べたいものを食べています。
テラエナジー
僧侶が起業したテラエナジーらしい質問もさせてください。生まれて生きて死んでいくという死生観の質問を皆さんにさせていただいてるんですが、死生観について考えたことはありますか。
藤江さん
誰しもいつか死ぬので、「何が残せるか」でしょうか。大層なことを残せなくてもいいんですけど。父親が最近亡くなったので、自分もいつか死ぬと思うし、今50歳で、仕事もあと何年と考えると、どうしようかなと思いますね。
テラエナジー
生きているうちに何か残したいという思いが強いということでしょうか。
藤江さん
たとえば 歴史の本が好きなんです。人類が、さまざまな人が生まれて死んでいく中で、いろいろな仕組みができたりしてきていますよね。それに対して、今自分はどういうポジションにいて、何をしているのかなと考えたりはします。
料理の分野においても、料理の歴史というものがあります。料理の歴史、つまり積み重ねてきたものがこれまでに色々あって、料理の世界でも変遷があります。たとえば、料理の材料を揃えるには、かつては自分で育てたり、物を採ってきたり、山や川で採取してきたりしていました。それが、今はスーパーで珍しい食材も買えたり、レストランで出るようなメニューも料理のアプリを見ながら家で作ることができます。そういった環境や仕組みを、誰かが整えてくれています。
もっというと、コロナの影響で外に飲みに行きにくくなっても、その状況に対応できるような環境や流れができている。だから何をしたいというよりは、時の流れというか、いろいろな歴史の中で、今できることをする。
たとえば環境の問題にしても、公害の問題にしてもそうなんですけど、誰かが何かを判断して、問題が起きているわけです。その人が公害を起こそうと思ったわけじゃないかもしれないけれども、工場を作ろうという判断をし、煙がどれだけ出るかは分かります。そこで、市民ひとり一人が、そういった際に何を考え、どう向き合うかのきっかけや、考えるためのヒントを提供するという役割があおぞら財団にはあるので、ちゃんと仕事をするということかなと思います。あおぞら財団の仕事を真面目にするということですね。

テラエナジー
とても大事なことだと私も感じます。死生観と、藤江さんのお好きな料理の二つをミックスした質問をしようと思うんですけども、最後の晩餐に何を食べたいですか。
藤江さん
話が少し逸れますけど、好きなものは変わるんだなと思うようになりました。食べたいものは、その日の体調とかによって変わりますよね。その時思いついた一番おいしいものを食べたいなと今は思っています。昔、きゅうりをあまり食べなかったんですよ。きゅうりは水分だけだから食べても意味ないと思っていたんですけど、最近きゅうりが美味しいなと思っています。
テラエナジー
御馳走というよりも日常のものが食べたいのかなという感じでしょうか。
藤江さん
そうですね。最近、意外ときゅうりが恐るべし、すごい食べ物なのでは!? と思い始めました。みょうがも冷や奴と一緒に食べたら美味しいですし。そうだ、冷や奴にしておいてください。

テラエナジー
最後に読者へひと言お願いします。
藤江さん
あおぞら財団は、環境問題に取り組んでいる団体です。テラエナジーさんに関わっておられる方たちも環境問題に関心の高い方が多いと思うので、公害の問題や、地域でどうやって環境を良くしていくかについて、協力し合ったり、何か一緒にできることがあれば、ぜひ一緒にやりましょう。
テラエナジー
ありがとうございました!まじめな問題に取り組むときも、あくまで「おもしろい」かどうかを軸に判断して活動されているあおぞら財団を一緒に応援してみませんか?