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みんなでつくる働く場

社会福祉法人 ゆうとおん

Activity活動内容

私たちはこんな思いを大切に活動を続けています。

活気があるけれど ゆったりしていて
真剣だけれど かたくるしくなく
とりあえずそこにいれば
心と体がホッとする
どこにでもありそうで
どこを探しても なかなかみつからない
そんな《しごとば》をつくりたい
ひくつにならず ごうまんにならず
小さなちがいに とらわれず
小さなことも ないがしろにせず
失敗も たくさんして
どんどん じゆうになっていきたい

いろんな人がいてこそ社会
いろんな人が生かしあえる関係
だれもが共に ゆったり
生きてゆける 社会をめざして
障がいのある人 お年寄り
子供 だれにでも
開かれた場作りをしてゆきたい
仕事のために人がいるというよりも
人のために仕事があるということを
忘れずにゆきたい

Interview「人間生きてるだけでええやないの、どんな人でも」 みんなでともに生きていく

畑健次郎
社会福祉法人 ゆうとおん 理事長

「ゆうとおん」は、大阪府八尾市で障害福祉サービスを営む社会福祉法人です。1996年、反差別の観点から「障がい児・者」の保育や教育、そして就労問題を考える市民運動を基盤とし、「みんなでつくる働く場」を合言葉に発足しました。

現在は、就労移行支援・就労継続支援事業や生活介護事業などに取り組んでいます。今回、理事長である畑健次郎さんにお話をお伺いしました。

ライター:黒木 萌
宮崎県延岡市生まれ、在住。大学卒業後、企業で総務、人事・勤労業務を経験。通信制高校サポート校での勤務を経験。文章を読むことと書くことが好きで、本に関するイベントを多数企画。最近の癒しは絵を描く(特に色を塗る)こと。好きな色は青で、春の海が好き。今年から始めた畑にほぼ毎日通っている。

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障害児の親の思いに共感し、共に社会運動をはじめた

TE
「ゆうとおん」の活動内容を教えてください。

畑さん
パンやクッキーを焼いたり、紙漉きをしたり、さをり織りをしたり、かりんとうを作ったりなど、もの作りがあります。ほかにも軽作業など、みんなが興味を持ってやれるいろいろなことに取り組んでいます。

工賃の仕組みは決まっています。たとえばパンでしたら、原材料費を除いた収益を、ゆうとおんに来ている当事者のみんなに分けます。以前は全部一律で、何をしても収益をみんなで分けることが一番いいと思っていたのですが、現実には稼ぎたい人もそうでない人もいろいろな人がいます。それで今は部門別に、たとえばパンで収益が上がったらパンを担当した人で分ける、という感じに定着しています。

作業所の隣で販売もしている「ありありす」

TE
ゆうとおんを始めたきっかけは何ですか。

畑さん
直接のきっかけは、車椅子で身体障害のある人が一緒に働きたいと言ってきたことです。「ほかにも何人か一緒に」と言ってきたんですけど、「ほんなら無認可の作業所からスタートしようか」となりました。

1975年、今からもう50年近く前のことですが、当時、八尾市だけではなくどこでもそうだったんですけど、公立保育所になかなか障害児が入りにくいという状況がありました。八尾の場合、母親たちがその状況を変えようと、市役所前で座り込みをしていました。僕らはそれに共感して、一緒にやりだしました。そこから付き合いが始まって、その流れの中でゆうとおんを始めた側面もあります。

TE
畑理事長はもともとそういったことを仕事にされていたんですか。

畑さん
いいえ。「福祉の仕事」という形ではゆうとおんを始めたときが最初です。ずっと当事者と一緒にいろいろな活動はしていましたが、まさか自分で作業所を立ち上げるとは全然思っていませんでした。

でも福祉との繋がりはずっとありました。中学を卒業したら進学や就職をしない人もいますし、養護学校に行く人など、人によっていろいろなパターンがあって、そういう人たちとの付き合いはありましたが、こんな形で仕事になるとは夢にも思っていませんでした。

 

当事者が自分たちで企画する「みんなできめる会」

TE
活動の内容は誰が考えるんですか。

畑さん
現場から出てきたり、理事会から出てきたりします。
当事者からいろいろな声が出てくるのが一番いいと思っています。どんな小さなことでもいいので「自分たちがこうしたらいい」という声がほしいです。それから「みんなできめる会」というものがあります。当事者が代表を選んで、自分たちでいろいろなことを企画したりするんです。

TE
自治」のようなものでしょうか。

畑さん
そうですね。たとえば、当事者主体の集まりである「ピープルファースト運動」で全国大会があります。そういう場には、どんな人も、「行きたい」と言ったら一緒に行ってもらったりしています。
「表現は言葉だけじゃない」という形で、口で理屈を言えない人も含めて参加してもらうんです。そういうことをこれからもやっていけたらと思っています。

TE
そう思うようになったきっかけはありますか。

畑さん
いつからか分かりませんが、僕は基本的には、
「人間生きてるだけでええやないの、どんな人でも」という考えが一番なんです。だから多少いい加減でもいいし、自分なりにできる範囲でいいし。他人の存在は、生きているということが最大の価値だと思えるようになりたいと思っています。

それでも職員に対しては「こいつは何しとんねん」と思ったりすることがあります。どんなに重度の障害があっても、その人が生きているというだけで価値を見出せるようになるのが我々の仕事です

そもそも「生きているだけ」というのはこちら側から見た表現ですし、当人が生きていることはその人にとって大切なことだし、大変なことです。その人が生きているということを、まるごと認められるような社会になればいいなと思いながら「自分は永遠になれないな」という自覚もありますね。根がほんまにええかげんですから。

ご利用者の作品

自治組織を通して、当事者が力をつけていくように

TE
どんな思いを大事にして活動していますか。

畑さん
「ともに生きていく」という掛け声を持っています。「みんなで一緒に働く」「みんなで仕事を作っていこう」ということですね。さっき言ったみたいに、内職みたいなものではなく、儲からなくてもいいから何か「生み出す仕事」をしたいと思っています。

今のシステムの中では、職員と当事者で立場がはっきりと分かれているんですが、そうではなくてみんな団子になって一緒にやっていこう、と始めました。最初は経済的には貧しい中でもみんな一緒に団子になってやっていたのですが、最近は変質してくる部分は避けられない部分もあると思っています。職員は「指導する側」で、当事者はいろいろ「指示される側」みたいな関係は歴然とある部分もあると感じています。

TE
利用者さんもスタッフさんも、同じように接しているんですね。

畑さん
はい。出発した当時は
全員「スタッフ」と呼んでいたんです。無認可のときは好きにやれたんです。ところがお金がないので、法人の資格を取ったらお金はきちんと入ってくるようになるけれど、その中で縛られることもできてきます。

典型的なのが「支援計画」というものがあります。直接的には「その人のためにどういうふうな計画を持って、どういうふうに働きかけていったらいいか」ということなんですが。いくら善意からスタートしても、これがあると「決めていく側」と「受け身の側」となっていくのが自然かなと思うんです。逆に当事者の方が職員にきちんと、たとえばあべこべに「お前はこうなる」と指摘できるような力をつけられたらいいと思うんですけど。

ただ正直言って、身体障がい者が中心のところは実際そうなっているところもあるんです。身体障がい者が職員にきちんと「こうしてくれ」と要求していく。でもうちみたいな知的障がい者が中心の場合は、なかなか難しいです。どうしても職員は指示的になります。だから、そこのところは気をつけて運営しないといけないと思っています。

活動の一つの沙織織

TE
お話をお聞きして、きっと他の施設にも同じような課題があると思ったんですが、何か工夫しているところはありますか。

畑さん
現実的にできることは、
当事者が力をつけていくということです。力のつけ方についてはいろいろあるんですけれども、自分たちで「自治組織」を持つということです。この間、交流会でいろいろ働きかけてきたんですけど、このコロナ禍でなかなかできなくなっているのが現状です。

それからいろいろな体験ですね。彼らの場合、体験の幅が相対的に狭いです。だから旅行をしたり、いろいろな人と交流するという経験を増やしていって、自分たちで判断できる領域を広げていきます。そのために細々とやってきたんですが、非常に難しいのがこのコロナ禍の状況です。

少しの冒険心をもって当事者の思いを尊重する

TE
27年間で一番難しかった、苦労されたことは何ですか。

畑さん
お金が必要なんやな」というのはありますね。コロナ禍ということもありますが、最初の頃は、いいかどうかは別にして、職員の賃金がある程度低くても「みんなでこういうことをやっていこう」とできていて、そんなに問題にならなかったんです。けれども、生まれたお金の使い道が、今はほとんど人件費で、その比率がすごく高くなっています。

でも働く側からしたら当然です。福祉業界はもともと賃金がどうしても低いシステムになっています。ただ、当事者がいろいろなことを体験できるための活動費と、職員がきちんと生活できる状況のバランスを取ることが難しくて、なかなか悩むところではあります。

利用者のための工夫があちこちに

TE
団体をこれまで運営してきて、面白かったことはありますか。

畑さん
みんなとワイワイガヤガヤして、旅行に行ったり、いろいろなイベントをしたり、そういうのはいつも面白かったです。たとえば餅つきを一緒にしたり。そこでも労働問題が出てきて、昔は例えば「餅つきやるわ」と言ったら、当事者もその親も職員も休みの日に出てきてやっていたんですね。長いことそうだったんですけど、職員にとってはそういうことも仕事なんですよね。

それは当然なんだけれど、私の認識とはまだちょっとずれがあると感じています。「楽しいことはみんなで一緒に、仕事じゃなしにやったらええやないか」と言ったら、「何か事故があったときどないするんですか」と言われました。保険には入っているんですけどね。でも、みんなと一緒にやることはほんとうに楽しいことが多かったです。

その中でも動かなくてリスクを避けるよりは、とにかくリスクが多少あっても動いていく方が大事だし、失敗する方が身につくこともあります。できたら我々がいなくなってもそういう形でこれからもやってほしいなと思っています。

全部「安全第一」になってきているんですよね。一泊旅行でもリスクがあるんです。それでもみんなにとってはすごく貴重な経験だし、そういうことにもう少し前向きに取り組んでもらえたらと思っています。

せっかく仕事をするんだったら、できたらいい仕事をしたい。仕事というのは安全第一だけではないやろと。少し冒険心がなければ、当事者の気持ちや思いがわからないのではないかと思っています。そういうことをぱっとうまく伝えたいと思うけれど、なかなか難しいです。

「世の中ぜんぶお互いさま」の社会をめざして

TE
ゆうとおんとして社会がこういうふうになったらいいなと思うことはありますか。

畑さん
「世の中ぜんぶお互いさま」の社会に
なればいいなと思っています。みんな人間は障害があろうがなかろうがどっこいどっこいですし。対等の人格を持っている一人の人間同士です。障害当事者と私たちの関係だけじゃなく、世の中全般にそれが広がればいいと思っていますけど、なかなか現実は甘くないと痛感していますね。

TE
テラエナジーを通して集まった寄付の使い道は決めていらっしゃいますか。

畑さん
当事者のみんなと一緒に遊びます
。不謹慎かもしれないですけど、遊ぶお金、いろいろなイベントに使えると思っています。特に彼らが企画して行うイベントに使いたいです。どんなに小さいことでもいいので、本人たちが行うものに使うのが一番、趣旨に沿っていると思います。何かみんなが楽しめることに使えたらいいかなと思っています。

「死はみんな順番に訪れる」 畑健次郎さんの死生観

TE
最後にテラエナジーらしい質問として、畑さんが生まれて、生きて、死んでいく「死生観」についてどういうふうに感じているかお聞かせください。

畑さん
ええかげんな人間やからないんですけど。生きていていろいろなことがあるけれども、
一生懸命それなりに、自分なりに生きてみて、死ぬときに「お疲れさん」というぐらいの感じで死ねたら、と思います。

実際、意外と僕はもう死が近いですからね。もう今年から後期高齢者に入るので。いろいろなことがあっても、どんなことでもいい経験をさせてもらったと思って死ねたらいいかなと思います。でも実際に死ぬときはジタバタするのではないかという気もしますね。

TE
「死んだ後」に対するイメージはありますか。

畑さん
昔は「死」が怖かったですけど、今は怖さがないことはないけれども
「みんな順番やな」と思っています。物理的に年を取ってきたということもあるし、死んだ人をいっぱい見てきました。

若くして亡くなる人を見たら見たら無念だと思います。でもある程度年を取った人で自分なりに納得できる人生を送ったと思える人を見たら「いや、そんなにめちゃくちゃ悲しいことでもないだろうな」と思ったりします。自分も静かに、のんびりと逝きたいなと。

TE
ありがとうございました。当事者の思いを大事に活動されていることがとても伝わってくるインタビューでした。あなたもゆうとおんの当事者活動を一緒に応援してみませんか?

団体情報

設立
1996年
活動領域
働く場づくり・就職・雇用・社会福祉
活動中心地域
大阪府八尾市

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