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2024.08.07

【メディア報告】日経GXに掲載いただきました(2024年8月7日付)

2024.08.07

2024(令和6)年8月7日(水)付の日経GXに、京都市と連携して進めている脱炭素先行地域の取り組みの様子が掲載されました。

京都の寺社も脱炭素 僧侶が電力会社、市は太陽光補助金

京都の寺社が再生可能エネルギーを導入し、二酸化炭素(CO2)削減に取り組んでいる。僧侶らが経営する電力会社が再生エネを供給し、太陽光発電設備を設置する。京都市は寺社に太陽光発電や蓄電池の設置費用の3分の2を補助する。本山・本社の多い京都で成功すれば全国の寺社に波及するとにらみ、2030年度までに寺社100カ所で太陽光や省エネ機器の導入を目指す。

信者の不安解消

京都市伏見区の閑静な住宅街にたたずむ妙福寺は24年春、太陽光パネルと蓄電設備を築40年ほどの講堂の屋上に導入した。僧侶らが経営する新電力会社TERA Energy(テラエナジー、京都市)が太陽光パネルを設置・管理し、妙福寺は月々の電気代を支払う。初期費用はゼロだった。

これまで年間予算の1〜2割を占めていた電気料金は、4月には前年より約13%減った。割引キャンペーンも含めると実質の支払額はさらに少ない。

「東日本大震災を機に環境意識が高まった」。住職の松本現薫氏は以前から太陽光発電に関心があったと話す。しかし導入には運営を支える信者らの同意が欠かせない。事務局を構成する数十人ほどの信者には年配者も多い。暴風でパネルが飛ばされないか、建物は荷重に耐えられるのか、説明会を繰り返し開いて信者の不安を解消していった。

脱炭素先行地域に選定

温暖化ガス(GHG)排出量を50年に実質ゼロにする政府目標の達成に向け、環境省は22年から脱炭素先行地域を選定している。自治体主導で省エネ機器や太陽光パネルなどを導入する際に財政支援し、これまでに6県と94市町村の計73件が採択された。財政支援は1提案につき5年間で最大50億円で、25年度までに少なくとも100カ所を選定する目標だ。

京都市は23年度から脱炭素先行地域として対策に取り組み、30年度にGHG排出量を13年度比46%減を目指している。施策の目玉となるのが「文化遺産の脱炭素転換」だ。寺社100カ所の電力需要は年間約1000万キロワット時と推計する。

補助金を受け取るには再生エネへの転換が前提条件だ。太陽光発電や蓄電池の設置費用の3分の2を補助する。省エネ型のエアコンやLED照明への切り替えも支援する。これまで宗教団体への脱炭素支援は家庭や企業に比べて後れをとってきた。京都市の地球温暖化対策室は「40年前の空調を使っている所もある」と話す。

収益の一部は寄付に

市と連携して呼びかけるのがテラエナジーだ。18年に起業し、「寄付つきでんき」を販売する。収益の一部を非営利組織(NPO)や環境団体、宗教法人などへの寄付に充てる。支援先は約100団体から顧客が選び、24年6月期の利益から2000万円ほどを寄付したという。

ドイツの「シュタットベルケ」という仕組みを参考にしている。シュタットベルケは電力を販売し、その利益を公共サービスに還元する。もともと自殺を防ぐ相談センターに携わっていた竹本了悟代表は電力事業を通して「応援したいと思う活動に自然とお金が集まる仕組みにしていきたい」と話す。

24年6月期の売上高は27億円で、電力小売りの契約件数は企業や寺社など3000件超まで拡大した。竹本代表は「寺社の格式が高い京都でうまくいけば全国でも展開できる」と意気込む。

初年度2寺、景観規制が壁

だが実際に設置に至ったケースはまだ少ない。初年度の23年度に設置したのは妙福寺を含めて2寺のみ。本年度は約20カ所の新たな参加を目指しているが、京都市の厳しい景観規制が一因となり、思うように導入が進まない。

景観規制は地区によって厳しさが異なる。参拝者から太陽光パネルが見えないようにする必要がある区域やそもそも全く手をつけられない区域があり、敷地内でも規制区域が異なる場合もある。

境内の駐車場も適地となり得るが、太陽光パネル付きの車庫「ソーラーカーポート」は支柱を建てる際に地面を掘る必要があり、文化財保護の観点から困難がつきまとう。妙福寺と同時期に太陽光パネルを導入した壬生寺は、敷地内で運営する老人ホームの屋上に設置した。

宗教と防災に詳しい大阪大学の稲場圭信教授は、寺社が発電設備を備えることで地域の防災拠点としての機能向上を期待する。災害が頻発する中で自治体から避難所に指定される寺社は増加しているという。太陽光発電設備があれば、停電時でもスマートフォンを充電できる。

災害時に真価を発揮するためには平時から地域住民が携わる形で防災イベントが欠かせない。脱炭素や防災の意識を根付かせる活動が増えれば、子どもにとって寺社が生きた教材になる可能性がありそうだ。(足立佑太)

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